2018.09.15

あなたは気づいた?これを知れば映画を100倍楽しめる!『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のトリビア大解説!!!

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シリーズの生みの親スティーヴン・スピルバーグ、そして前作『ジュラシック・ワールド』で伝説化していた大人気シリーズを完全復活へと導いたコリン・トレボロウら製作総指揮の元、本作でシリーズ初参戦でありながらスピルバーグに「僕が『ジュラシック・パーク』(93)と『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)で出来なかったことをやってのけた」と言わしめるほどの手腕を発揮した鬼才J・A・バヨナ監督によって完成した本作。3人のクリエイターは、第1作公開時から25年経ってもなお絶大な人気を誇る『ジュラシック』の精神を最新作にも引き継ぎ、作品の隅々に散りばめました。

今回は、 “これを知ればさらに『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を楽しめる!”というトリビアの数々を、日本初の恐竜専門サイエンス・コミュニケーター・恐竜くんの解説と共にご紹介します!

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【恐竜くんとは?】
幼いころに恐竜に魅せられ、16才で単身カナダに留学。恐竜の研究が盛んなアルバータ大学で古生物学を中心に広くサイエンスを学び、卒業後「恐竜くん」としての活動を開始。恐竜展の企画・監修、トークショーやワークショップなどの体験教室の開催、ロボットや模型のデザイン・監修、メディア出演、執筆、翻訳など幅広く手がけるほか、イラストレーターとしても活躍している。

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恐竜くんが描いたT-レックス

恐竜くん自身が描いたT-レックスのイラスト

恐竜くんが描いたモササウルス

恐竜くん自身が描いたモササウルスのイラスト

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前作『ジュラシック・ワールド』でみられた様々なオマージュは、過去の作品や原作への敬意と憧憬にあふれ、長年のファンはどこか懐かしさを覚えたり、細部へのこだわりにニヤリとしたり…というものでした。一方、本作での過去作へのリンクの仕方はかなり趣きが異なり、そこから感じ取れるのはむしろ、これまでのシリーズとの「決別」です。
本作の原題『Fallen Kingdom』は、直訳すれば「陥落した(崩壊した)王国」ですが、この「王国」には少なくとも2つの意味があると考えられます。
一つ目はもちろん、映画前半の火山噴火により崩壊したイスラ・ヌブラル(※以降「ヌブラル島」)。二つ目は「恐竜たちの島外進出」とクローン技術という圧倒的な力を手にした人類の「果てしない暴走と欲望」により、まさに崩壊しつつある「これまでの世界・価値観・生態系(注1)」そのものです。特に後者は本作の真のテーマといえるでしょう。

劇中、シリーズの象徴的な舞台であった「ヌブラル島」は焼き尽くされ、登場人物たちの口からは「もう後戻りできない」という言葉が何度も繰り返されます。シリーズ上の位置づけとしても、本作がこれまでの物語・展開からの脱却と転換を意図していることは明らかです。本作におけるオマージュをはじめとする各種の演出は、取り上げるべき数は前作と比べて少ないかもしれませんが、その分、制作者の意図が強く反映されたものになっています。

※以下、小説版『ジュラシック・パーク』を「原作」、映画版『ジュラシック・パーク』を「第1作」、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』を「第2作」、『ジュラシック・パークⅢ』を「第3作」、『ジュラシック・ワールド』を「前作」、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を「本作」とする。

▼トリビア紹介▼

・三度登場のイアン・マルコム博士

先述した本作のテーマは、原作1作目から一貫してマルコム博士が訴え、警鐘を鳴らしてきたテーマでもある。数多の登場人物の中でも、本作の導入と幕引きを担えるキャラクターは、やはりマルコム博士しかいないだろう。

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・ハモンドの旧友

本作終盤の舞台ロックウッド邸には、ジュラシック・パーク創設者ジョン・ハモンドの肖像画があるほか、ハモンドの旧友ベンジャミン・ロックウッドの手には、彼とお揃いの「蚊が閉じ込められた琥珀」の装飾つきの杖が握られていた。

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・訪問者を迎えるブラキオサウルス

本シリーズにおいて、恐竜の怖さよりも穏やかな雄大さ、美しさを体現する存在であるブラキオサウルス。
過去作ではいつも登場人物(と観客)にとっての「癒し」というべき役回りを演じてきたが、本作では第1作同様、島を訪れた主人公たちが最初に出会うこととなる。なお、本作のブラキオサウルスは第1作で最初にグラント博士達が出会った「あのブラキオサウルス」と同一個体であると、監督が明言している(注2)。しかし、この設定を知ると、後述するとあるシーンが一層悲壮に感じられることに…。

・フォード・エクスプローラー

ブルーとオーウェンが再会するのは、第1作でパーク見学者が乗車したフォード・エクスプローラーの前。ひっくり返っている点、すぐ近くに大木がある点などから、劇中でT-レックスの攻撃を受けて落下した、あの車体を連想させる (注3)。25年間放置されてなお比較的綺麗な外装を見るに、パークの設備や品質についてのハモンドの口癖”Spared no expense!”(金に糸目はつけてない!)は、伊達ではなかったようだ。

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・暴走する恐竜から身を隠す

大規模な噴火が始まり、迫る火砕流から逃げる恐竜たち。暴走に巻き込まれた主人公達が大きな倒木に身を隠すシーンは、第1作でガリミムスの群れから逃げるグラント博士と子どもたちのシーンを彷彿とさせる。ただ、今回は細身のダチョウ恐竜ではなく主に大型恐竜たちの暴走であったため、大木は見る影もなく破壊されてしまった。

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・原作ファン待望の登場!カルノタウルス

原作の続編小説『ロスト・ワールド』での登場以来、長年ファンから映画出演が待望されていた「カルノタウルス」が遂に本作で登場。小説ではタコのように「周囲の風景に完全に溶け込む」という擬態能力を持つ恐竜として設定されていたが、本作ではそういった能力の有無は不明。ただ、この擬態能力は前作のハイブリッド恐竜インドミナスに受け継がれており、インドミナスに組み込まれた恐竜の「リスト」にもしっかりカルノタウルスが入っている。

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・T-レックスの寿命は?

劇中、登場人物たちがT-レックスの寿命について話すシーンがある。前作及び本作に登場するT-レックスは第1作と同一個体で、設定上は29歳前後となる。一方、実在したT-レックスの寿命は科学的に約30年と推定されているので、本作の個体は本来ならかなりの高齢といえるが、今のところ全く衰えを感じさせない見事な暴れぶりだ。一見何気ない会話ながら、劇中の設定と学術的な研究成果の両方を踏まえた上で「なぜ今も健在なのか」という当然の疑問にもフォローが入るなど、意外と奥の深いシーンである。

・野生を取り戻した?T-レックスの声

先述の通り本作のT-レックスは第1作及び前作と同一の個体であり、実際に第1作のラストでヴェロキラプトルにつけられた首周りの傷や、前作終盤のインドミナス戦での傷が確認できる。相変わらずヤギ(とヒト)の味もお気に入りのようだ。
一点、前作では何故か第1作と鳴き声が違い、どこか声に張りが無い点が気になっていたのだが、本作ではちゃんと「昔の声」に戻っていて安心した。ひょっとしたら、単調で張り合いのない飼育環境から再び野生に解き放たれたことで、かつての感覚を取り戻した…ということかもしれない。

・炎に包まれるイスラ・ヌブラル

本来、マイケル・クライトンの原作では、物語終盤でヌブラル島に対する軍事爆撃が行われ、パーク及び恐竜たちは人為的に焼き尽くされてしまう。
本作で島を焼き尽くすのは火山の噴火、すなわち「自然の猛威」に変換されてはいるが、ここにきて、本シリーズは初めて原作者の意図したジュラシック・パークの結末に追いついた、ともいえるだろう。

・インドラプトルの習性

自らを囮にしての騙し討ち、ハンドルをいじって窓を開ける、後足のカギ爪で床をコツコツ叩く癖、狭い場所に隠れようとする少女に突進して頭から追突する……その描写は、明らかに第1作のヴェロキラプトルを強く意識したものだろう(第2~前作のラプトルには、意外とこういった行動は見られない)。ちなみに、インドラプトルは今のところシリーズで唯一、最初から意図的に「オス」として生み出された恐竜である(注4)。

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※ここから先はストーリーの重要なネタバレを含みます。映画を観た後にご覧ください!※

 

 

 

 

 

・黄色いレインウェアは縁起が悪い?

冒頭、豪雨の中で作業する黄色いレインウェアの男性。命からがらT-レックスから逃げきったかと思った直後、モササウルスに丸飲みにされる。雨の中の黄色いレインウェアといえば、第1作の悪役デニス・ネドリーを思い出す。彼もまた、激しい雨の中でディロフォサウルスと遭遇し、何とか逃げのびたと一息ついた瞬間に襲われ、命を落とした。

・取り残されたブラキオサウルス

炎上する島から脱出した主人公達が最後に目にするのは、岸辺に取り残されたブラキオサウルスだった。第1作の初登場時に印象的だった後足立ちのポーズで、悲しげな声をあげながら炎に包まれ消えていく。その姿は、これまでの一連の物語及びパーク(ヌブラル島)の完全な終焉を象徴すると同時に、ヒトが犯した過ちの大きさや罪の深さを主人公達(と私たち)の心に刻み込む、悲しくも重要なシーンだ。(注5)
ちなみに、このシーンはスピルバーグの生み出したあのE.T.の心臓をイメージしたと監督が語っている。
https://twitter.com/FilmBayona/status/1027631414261547008

・T-レックスの決めポーズ

終盤、本作随一の悪党ミルズを豪快に仕留めるT-レックス。ミルズの「一部」をかすめ取ろうとしたカルノタウルスを容赦なく追い払い、お馴染みの咆哮をあげるが、この時のポーズが第1作ラストと全く同じ (ただし反対向き)になっている。

・檻をやぶるT-レックス

ライオンの檻に侵入するシーンの効果音が第1作のT-レックス初登場シーンと全く同じである。どちらもT-レックスが檻をやぶるシーンだが、第1作では「パークの崩壊」を象徴した音が、本作ではこれまでの「世界の崩壊」と「新たな時代の幕開け」を告げる音となった。

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・鳥が翼竜に…

第1作ラストでグラント博士が見守る中、夕日に照らされた海上を優雅に飛ぶ鳥たち。
一方、本作のラストで夕日をバックに海上を舞うのは翼竜たちだ。見つめるオーウェン達の表情は険しく、待ち受ける波乱を暗示するかのようだ。

【まとめ】

登場人物たちの口から何度も繰り返される「もう後戻りはできない」「元には戻らない」という言葉通り、
彼らの世界は全く新たな価値観に支配された時代を迎えようとしている。
これまでのシリーズ展開に一旦終止符を打ち、ここから物語は未知なる領域へと踏み出すという、製作者の明確な意図が感じられた。
本シリーズは当初から3部作として構想されており、すでに3作目の製作も発表されている。
本作の本当の評価は、最終作となる次作の公開を待たねばならないだろう。

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注1:生物学用語としての「Kingdom」は、生物分類における上位階級の一つ「界」を意味する(日本語では動物界、植物界などとします)。
Fallen Kingdomは、すなわち現生の生態系そのものの陥落も暗喩していると思われる。

注2:本作のブラキオサウルスは当然第1作に準拠したデザインですが、3作目に登場したブラキオサウルスは、頭部回りなどに赤みがかった模様があり、
造形も若干違っていた。第2及び3作目の舞台イスラ・ソルナ(ソルナ島)にはメスだけでなくオスの恐竜も生息しているので、3作目のやや派手なブラキオサウルスはオスだったのかもしれない (第1作と本作のブラキオサウルスはメス)。

注3:第1作でT-レックスが食いちぎったのは左後輪だったが、本作では右後輪のタイヤがなくなっているようにみえる。

注4:原作と映画シリーズ共通の原則として、ヒトの飼育下にある恐竜は、想定外の繁殖を抑制し、個体数を徹底的に管理するという目的から全て「メス」として生み出されている。第2・3作のみ、ソルナ島で野生化した恐竜たちのオスが登場した。

注5:重要なシーンだからこそ、この個体が第1作の「あのブラキオサウルス」でなければならない、という監督の考えは十分に理解できる。
だが、それにしても正直このシーンは悲しすぎる(お陰で、私は暫くその後のストーリーに集中できなかった!)。それこそが制作者の意図するところなのだろうが、何もそこまで辛い設定にしなくても…と思ってしまう自分がいる(笑)。

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もう一度、この目で確かめたい!と思った方も、まだ観ていない方も、ぜひ映画館でこのトリビアの数々をチェックしてみてください!